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忘れられない、5年前の「父の日」

私は父のことが昔から苦手でした。
仕事一筋で家にいる時間が短く、私が寝るまで帰ってこないことがしばしばありました。
学校の行事に父が来てくれることはただの一度もありませんでした。
お盆の時期でさえ仕事に出て、一日中家にいる日は1年のうち1週間もなかったぐらいでした。
小学校一年生の運動会の三日前、私はどうしても父に来て欲しくてしつこくせがみました。
最初は渋っていた父は根負けしたのか「見に行くよ」と約束をしてくれました。
その言葉に私は舞い上がって喜びました。
頑張る姿を父が見てくれると思うととても嬉しかったのです。
しかし運動会当日、待っても待っても父は来てくれません。
来てくれた母に「お父さんはどこ」「いつ来てくれるの」と何度も何度も問いかけました。
結局父は姿を現さず、私は肩を落として家に帰りました。
後に聞いた話では急に取引先から連絡があり駆けつけることができなかったとのことです。
でもまだ幼かった私にそんなことがわかるはずがありません。
夜になって父がやっと帰ってくると、私は泣きながら父を責めました。
「なんで来てくれなかったの」「なんで私との約束破ったの」「お父さんなんて大嫌い」と散々恨み言を言いました。
父は言い訳をすることもなく、ただ「ごめん」と私の頭を撫でて慰めていました。
その後、父はなるべく私たち子どもに付き合うようになりました。
合間を縫って遊園地や旅行に連れて行ってもらったので嫌いになることはありませんでしたが、私たちの間にはいつまでもどこか溝があったように思えます。
毎年ある父の日も何をするでもなくただ普通の日として振舞っていました。
私が高校生だったある年のこと。
6月に入ってから少しして、母が私に「もうすぐ父の日だから、お父さんに何かしてあげたら」と言いました。
思い返してみると母の日は毎年祝っていたのですが、父の日に祝った記憶がありませんでした。
その頃になると私にも「大人の事情」というのが分かるようになってきて、父のこともだいぶ許せるようになっていました。
なので母と一緒に、本人には内緒で父の日に何かお祝いをしようということになりました。
父のことをよく思い出し、何が好きだったか、何をあげれば喜んで貰えるのか真剣に考えました。
そこで私は、父のことをあまり良く分かっていないことに気づいたのです。
私はただ父が苦手だからという理由で父を避け、向き合おうとしていなかったのだと思い知らされました。
そう考えると今まで過ごしてきた時間を悔やみました。
もっと父と話せる時間があったはずだと。
その反省を胸に、母と一緒に父の好きな白ワインを買いました。
迎えた父の日。
帰宅した父に、「父の日だから。
いつもありがとう」とサプライズでワインを手渡しました。
父は照れくさそうに「ありがとう」と受け取ってくれました。
笑顔を見るのはとても久しぶりでした。
すると父はぽつりと「父親らしいことをしてやれなくてごめん」と言いました。
仕事に追われて子供に構う時間がなかったと思っていたのでしょう。
私は言いました。
「今ならお父さんがちゃんと家族のことを考えていたことが分かるよ。
毎日遅くまでお疲れ様」私の言葉に父はホッとしたような笑みを浮かべました。
10年の月日を経て、私と父の距離は縮まりました。

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